固有時と4元ベクトル

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固有時の定義

相対論では、系によって流れる時間のスピードが異なる。ある系と共に動く時計が示す時間を、その慣性系の固有時\(\tau\)と言い、光速度不変の原理を使って、
$$(cd\tau)^2=(cdt)^2-(dx)^2-(dy)^2-(dz)^2$$
と定義される。系と共に動く場合は、\(d\boldsymbol{x}=0\)だから(当然そうなるように定義したわけだが)、\(d\tau=dt\)となる。また、定義より、固有時\(\tau\)はローレンツ変換に対して不変量となっている。

固有時導入のメリット

今、座標系\(K\)に対して、座標系\(K’\)が\(x\)軸方向に速度\(v\)で運動している時、\(K\)系から見た\(K’\)系の固有時は、固有時の定義より、
$$(cd\tau)^2=(cdt)^2-(vdt)^2-(0dt)^2-(0dt)^2$$
となるので、
$$\fbox{\(d\tau=\sqrt{1-(v/c)^2}dt\)}$$
となる。もちろん、ローレンツ変換の計算
$$d\tau=dt’=\frac{dt-(v/c^2)dx}{\sqrt{1-(v/c)^2}}=\frac{\{1-(v^2/c^2)\}dt}{\sqrt{1-(v/c)^2}}=\sqrt{1-(v/c)^2}dt$$
と同じになる。座標系がそれぞれ慣性系であれば(またはほんの一瞬あれば)、\(v\)は定数であるから、\(d\tau\)と\(dt\)は比例関係となっている。つまり、時間の流れるスピードが違うだけで、どちらの時間を使って物理法則を作っても、尺度が違うだけで同様に成り立つ。そして、固有時は不変量なので、固有時を使えば、ローレンツ変換に対応したさまざまな4元ベクトルを記述することができる。次の速度の例で具体的に見てみる。

4元ベクトル

4元微分

4元位置ベクトル\(x^\mu(ct,\boldsymbol{x})\)に対応した4元微分演算子\(\partial_\mu\)を
$$\begin{eqnarray}
\partial_\mu=\frac{\partial}{\partial x^\mu}=
\left(\begin{array}{c}
\partial_t/c\\
\partial_x\\
\partial_y\\
\partial_z
\end{array}\right)
\end{eqnarray}$$
で定義する。

4元速度

4元位置ベクトル\(x^\mu(ct,\boldsymbol{x})\)に対応した4元速度\(u^\mu\)を
$$\begin{eqnarray}
u^\mu=\frac{dx^\mu}{d\tau}=
\left(\begin{array}{c}
cdt/d\tau\\
dx/d\tau\\
dy/d\tau\\
dz/d\tau
\end{array}\right)
=\frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}
\left(\begin{array}{c}
cdt/dt\\
dx/dt\\
dy/dt\\
dz/dt
\end{array}\right)
=\frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}
\left(\begin{array}{c}
c\\
v_x\\
v_y\\
v_z
\end{array}\right)
\end{eqnarray}$$
で定義する。4元ベクトルを不変量\(\tau\)で割ったので、4元速度もローレンツ変換に従う。最後の項を見てわかる通り、速度を定数で割っているので、固有時の時と同様に尺度を変えただけである。また、内積は
$$u^\mu u_\mu
=
\left\{\frac{1}{\sqrt{1-(v/c)^2}}
\right\}^2\left(\begin{array}{cc}
c & \boldsymbol{v}
\end{array}\right)
\left(\begin{array}{c}
c\\
-\boldsymbol{v}
\end{array}\right)
=
\frac{c^2-v^2}{1-(v/c)^2}=c^2$$
となり、ローレンツ不変量となっている。

4元運動量

4元運動量\(p^\mu\)は、4元速度\(u_i
^\mu\)に静止質量\(m_0\)を掛けて定義する。静止質量\(m_0\)と質量\(m\)の関係は、
$$m=\frac{m_0}{\sqrt{1-(v/c)^2}}$$
であるから、
$$\fbox{\(\begin{eqnarray}
p^\mu=m_0u^\mu
=
\left(\begin{array}{c}
E/c\\
p_x\\
p_y\\
p_z
\end{array}\right)
\end{eqnarray}\)}$$
となる。内積は、
$$p^\mu p_\mu
=
\left(\begin{array}{cc}
E/c & \boldsymbol{p}
\end{array}\right)
\left(\begin{array}{c}
E/c\\
-\boldsymbol{p}
\end{array}\right)
=m_0^2u^\mu u_\mu=m_0^2c^2$$
となり、ローレンツ不変量となっている。

4元電流

一般的に、電流\(\boldsymbol{i}\)は、電荷密度\(\rho\)と速度\(\boldsymbol{v}\)を使って
$$\boldsymbol{i}=\frac{q}{dS\cdot dt}=\frac{q}{dV}\frac{dx}{dt}=\rho\boldsymbol{v}$$
と表される。したがって、4元電流\(j^\mu\)は、4元速度\(u^\mu\)に静止している電荷密度\(\rho_0\)を掛けて定義する。また、ローレンツ収縮より、静止している電荷密度\(\rho_0\)と動いている電荷密度\(\rho\)の関係は、
$$\rho=\frac{\rho_0}{\sqrt{1-(v/c)^2}}$$
であるから
$$\fbox{\(\begin{eqnarray}
j^\mu=\rho_0u^\mu
=
\left(\begin{array}{c}
c\rho\\
i_x\\
i_y\\
i_z
\end{array}\right)
\end{eqnarray}\)}$$
となる。内積は、
$$j^\mu j_\mu
=
\left(\begin{array}{cc}
c\rho & \boldsymbol{i}
\end{array}\right)
\left(\begin{array}{c}
c\rho\\
-\boldsymbol{i}
\end{array}\right)
=\rho_0^2u^\mu u_\mu=c^2\rho_0^2$$
となり、ローレンツ不変量となっている。

4元電磁ポテンシャル

ローレンツゲージのマクスウェル方程式は、
$$\begin{eqnarray}
\left(\Delta-\varepsilon_0\mu_0\frac{\partial^2}{\partial t^2}\right)V&=&-\frac{\rho}{\varepsilon_0}\\
\left(\Delta-\varepsilon_0\mu_0\frac{\partial^2}{\partial t^2}\right)\boldsymbol{A}&=&-\mu_0\boldsymbol{i}
\end{eqnarray}$$
であるから、
$$j^\mu=\left(\begin{array}{c}
c\rho\\
\boldsymbol{i}
\end{array}\right)
=-\frac{1}{\mu_0}\left(\begin{array}{c}
-c^2\mu_0\rho/c\\
-\mu_0\boldsymbol{i}
\end{array}\right)
=-\frac{1}{\mu_0}\left(\begin{array}{c}
-\rho/\varepsilon_0 c\\
-\mu_0\boldsymbol{i}
\end{array}\right)
=-\frac{1}{\mu_0}\left(\Delta-\varepsilon_0\mu_0\frac{\partial^2}{\partial t^2}\right)\left(\begin{array}{c}
V/c\\
\boldsymbol{A}
\end{array}\right)$$
となり、最後の項のベクトル部分を取り出して、4元電磁ポテンシャル\(A^\mu\)を
$$\fbox{\(\begin{eqnarray}
A^\mu=
\left(\begin{array}{c}
V/c\\
A_x\\
A_y\\
A_z
\end{array}\right)
\end{eqnarray}\)}$$
と定義する。

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