複素スカラー場の量子化

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反粒子

実スカラー場の量子化を参考に複素スカラー場の量子化を考える。複素スカラー場になると実部と虚部の自由度が1つ増える。結論から言うと、それにより、粒子と反粒子が表現される。

粒子と反粒子は、スピンや質量が同じで、電荷の符号が逆となる。粒子と反粒子が衝突すると消滅してエネルギーに代わり(対消滅)、ある条件でエネルギーを与えると、粒子と反粒子が生成される(対生成)。

この事から、複素スカラー場は、エネルギーの計算では足し算に、個数の計算では引き算になるような2種類の粒子の個数演算子を含んでいる。


ちなみに反粒子の重力は、一般の粒子と同じ向きに働きます。実験で証明されたようです。(詳しくはこちら


複素スカラー場の量子化

クライン-ゴルドン方程式を満たす複素スカラー場の量子化は、実スカラー場の量子化を参考に
ϕ(x,t)=d3k(2π)3212ωk(akeikx+bkeikx)
となる。また、その複素共役
ϕ(x,t)=d3k(2π)3212ωk(akeikx+bkeikx)
も同様にクライン-ゴルドン方程式を満たす。この時、abがそれぞれ粒子、反粒子の生成・消滅演算子となっているのであるが、その妥当性については後ほど議論する。

ラグランジアン密度

場のラグランジュ方程式に代入すると、クライン-ゴルドン方程式(波動方程式)が再現され、且つ、ラグランジアンが実数になるように考えると、
L=μϕμϕm2ϕϕ
となる。実際に計算してみると
LϕμL(μϕ)=m2ϕ◻ϕ=0LϕμL(μϕ)=m2ϕ◻ϕ=0
となり、確かにクライン-ゴルドン方程式が導かれる。ϕの微分でϕの式が求まる(もしくはその逆)のは、ϕϕが同じ2つの粒子を表しており、粒子と反粒子の違いはあくまでabの違いからくることに注意する。

ϕに正準共役の運動量

ラグランジアン密度より、ϕに正準共役の運動量を求めると
π=Lϕ˙=ϕ˙(ϕ˙ϕ˙ϕϕm2ϕϕ)=ϕ˙

となり、同様に

π=ϕ˙
となる。

2つの粒子

ここで、2つの粒子であることを明確とするため、2つの実スカラー場ϕ1ϕ2を使って、ϕを実部と虚部に分けて
ϕ=12(ϕ1iϕ2)ϕ=12(ϕ1+iϕ2)
と置く。見方を変えれば、ちょうど複素平面上で45度回転する変換
(ϕϕ)=(cos45sin45sin45cos45)(ϕ1iϕ2)
となっており、変換前後、つまりϕ1ϕ2ϕϕで波の形(実際の物理)は変わらない。ϕ1ϕ2を使うと、ラグランジアンは
L=μ{12(ϕ1+iϕ2)}μ{12(ϕ1iϕ2)}m2{12(ϕ1+iϕ2)}{12(ϕ1iϕ2)}=12μϕ1μϕ112m2ϕ12+12μϕ2μϕ212m2ϕ22
となり、ちょうど、2つの実スカラー場の合計となっていることがわかる。また、先ほど同様に実際にラグランジアンを代入して計算してみると
Lϕ1μL(μϕ1)=ϕ1{12(μϕ1)212m2ϕ12+12(μϕ2)212m2ϕ22}μ(μϕ1){12(μϕ1)212m2ϕ12+12(μϕ2)212m2ϕ22}=m2ϕ1ϕ1=0Lϕ2μL(μϕ2)=ϕ2{12(μϕ1)212m2ϕ12+12(μϕ2)212m2ϕ22}μ(μϕ2){12(μϕ1)212m2ϕ12+12(μϕ2)212m2ϕ22}=m2ϕ2ϕ2=0
となり、確かに2つのクライン-ゴルドン方程式が導出される。以上より、複素スカラー場は、実部と虚部の自由度によって異なる2種類の粒子を含むことがわかる。

ハミルトニアン

最初に複素数のルジャンドル変換を考える。一般的な解析力学と同様に

δL(ϕ˙,ϕ˙)=Lϕ˙δϕ˙+Lϕ˙δϕ˙=πδϕ+πδϕ˙δH(π,π)=Hπδπ+Hπδπ=ϕδπ+ϕδπ˙

と定義し、両辺を足すと

δ(L+H)=δ(πϕ)+δ(πϕ˙)

となるので、ルジャンドル変換より、
H=πϕ˙+πϕ˙L=ππ+ϕ˙ϕ˙(μϕμϕm2ϕϕ)=ππ+ϕ˙ϕ˙(ϕ˙ϕ˙ϕϕm2ϕϕ)
となるから、ハミルトニアンは、
H=dx3(ππ+ϕϕ+m2ϕϕ)
となる。(ハミルトニアンの変数にϕ˙ϕ˙は含まない)また、ラグランジアンはϕ1ϕ2の2種類の粒子の合計なので、ハミルトニアンは
H=d3x(π1ϕ1˙+π2ϕ2˙L)=d3kωk(a1ka1k+a2ka2k)
となる。ここで
a=12(a1ia2)b=12(a1+ia2)
なので、
a1=12(a+b)a2=i2(ab)
となる。従って、
H=d3kωk{12(ak+bk)12(ak+bk)+i2(akbk)i2(akbk)}
となるから、
H=d3kωk(akak+bkbk)
となる。エネルギーの計算では、2種類の粒子の個数演算子は足し算となっている。

個数演算子

クライン-ゴルドン方程式で定義した内積を使って、ϕϕの内積Nを計算してみると、
N=id3x{ϕtϕ(tϕ)ϕ}=id3xd3kd3k(2π)3{12ωω2i(aeikx+beikx)(aeikx+beikx)+ω2i12ω(aeikxbeikx)(aeikx+beikx)}=d3xd3kd3k(2π)3[12ωω{aaei(kxωt)+i(kxωt)+abei(kxωt)i(kxωt)baei(kxωt)+i(kxωt)+bbei(kxωt)i(kxωt)}+12ωω{aaei(kxωt)+i(kxωt)+abei(kxωt)i(kxωt)baei(kxωt)+i(kxωt)bbei(kxωt)i(kxωt)}]=12d3kd3k[ωω{δ(k+k)aaei(ωω)tδ(kk)abei(ω+ω)t+δ(k+k)baei(ω+ω)tδ(kk)bbei(ωω)t}+ωω{δ(k+k)aaei(ωω)t+δ(kk)abei(ω+ω)tδ(k+k)baei(ω+ω)tδ(kk)bbei(ωω)t}]=12d3k(aaabe2iωt+bae2iωtbb+aa+abe2iωtbae2iωtbb)=d3k(aabb)
となり、bbの交換関係より、定数項を削除して
N=d3k(akakbkbk)
となる。量子力学では状態ベクトルの内積は確率を表し、その確率は保存量となるから、ここで求めた演算子Nの固有値も保存量であり、式の内容から、Nは場の個数演算子と考えられる。個数の計算では、2種類の粒子の個数演算子は引き算となっている。

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