はじめに
の電荷を持つ1つの陽子と、の電荷を持つ1つの電子からなる水素原子は、シュレディンガー方程式で解析的に解ける数少ない例である。量子力学の2体問題は、古典力学同様、換算質量の1粒子の運動として扱って良いことがわかっている。
極座標表示のシュレディンガー方程式
水素原子の電子の波動関数を考える。波動関数は定常波で存在する。シュレディンガー方程式
を微分演算子の極座標表示を使って表すと
となる。
変数分離
ここで、極座標表示のシュレディンガー方程式を
のように変数分離することを考える。両辺にを掛けて変数が別れるように変形すると、
となる。そのままを代入して、両辺をで割ると
となる。両辺をと置けば、
となり、変数を分けた2つの式ができる。さらに、
のように変数分離すること考える。両辺にを掛けて変数が別れるように変形すると、
となる。を代入して、両辺をで割ると、
となる。両辺を(質量では無い)と置けば、
となる。
球面調和関数
変数を分けた式のうち、の式の解は、方向を変数とした関数で、球面調和関数と言う。計算が大変なので結論のみ書くと、
となる。とは整数で、(これによりは0または正)、となる。はルジャンドル陪関数と言い、
となり、更には、ルジャンドル多項式と言い、
となる。とても複雑で、式を見ただけでは何を表しているのかまったく検討がつかない。イメージでは、球体の表面が定常波で振動していて、やが大きいほど表面の波が細かくなる。2次元の円の定常波の場合、円周が波長の整数倍になっていることに対応する。(どちらも0の場合は、ただの球体が波打つことなく存在し、の時間変化によって、球体が大きくなったり小さくなったりする)よくある葉っぱの形の図は、波の振幅の2乗で、電子の存在確率を表しているので、球面調和関数のイメージとは違う。葉っぱが原点から伸びているのは、原点から特定の方向は振動していない点があり、波の節がある。その方向から少しでもズレれば振幅が存在し、葉っぱの一番大きな方向に波の腹がある。また、球面調和関数は球体の波の形のみを表し、原子核からの距離は考慮されていない。
動径方程式
変数を分けたもう一つの式は、及び、クーロンポテンシャルより、
となる。この式の解も計算が大変なので結論のみ書くと、
となる。は整数で、(これによりは正)となる。また、はボーア半径、である。はラゲールの陪多項式と言い、
となる。この解も複雑で、式を見ただけでは何を表しているのかまったく検討がつかない。イメージでは、原点(原子核の中心)から無限遠に波形が伸びていて、確率を計算したときに一番大きくなるところが、ちょうど電子の軌道半径になっている。が大きいほど、電子の軌道半径が大きくなる。電子殻のK殻、L殻、M殻、…と言うのは、が1、2、3、…に対応する。軌道半径と言っても、あくまで確率が一番大きいところ指しているので、軌道半径もまた、確定値ではない。
電子の波動方程式
水素原子の電子の波動方程式は、
となり、の3つの整数によって波形が決まる。を主量子数、を方位量子数、を磁気量子数と言う。それぞれの関係から、の組み合わせは、
主量子数n |
方位量子数l |
磁気量子数m |
1(K殻) |
0(1s軌道) |
0 |
2(L殻) |
0(2s軌道) |
0 |
1(2p軌道) |
-1 |
0 |
1 |
3(M殻) |
0(3s軌道) |
0 |
1(3p軌道) |
-1 |
0 |
1 |
2(3d軌道) |
-2 |
-1 |
0 |
1 |
2 |
となる。同様に、もっと大きい数も続いていき、電子殻には、個の波動関数があるのがわかる。ところで、水素原子だけでなく一般的な原子にも応用し、元素の周期律から最外殻の電子の個数を予想すると、それぞれの波動関数には、最大2つの電子が入ることになる。つまり、電子殻には個の電子が入る。1つの波動関数に2つの電子が入ることができるのは、電子には上下のスピンの自由度があるためである。